本年度は、平成21年~22年に発表した複数の研究内容を単著にとりまとめ出版を果たした。 単著の構成については、第一章に於いて、金融マーケティングの定義について文献レビューを行った。知覚リスクなどの概念を用い、既存のマーケティング理論を金融マーケティングや消費者行動分析へ適用することの限界を指摘した。第2章以降は実証分析主体の構成となっている。まず、ベイズ型コウホート分析法を用いて、日米資産選択の比較を行った。(1)日本においては、株式・株式投資信託、債券・公社債投資信託等のリスク性金融商品は時代効果・年齢効果および世代効果の3効果が大きい。(2)定期性預金(銀行・郵便局)、生命保険、金融機関外貯蓄(社内預金等)等の安全性重視の商品は年齢効果が大きい。(3)通貨性預金(銀行・郵便局)は時代効果が大きい。(4)金融商品の選択基準に関してはどの項目についても時代効果の影響が大きく、経済状況に呼応して重視する選択基準が異なる、(5)金融資産選択行動に関しては日米で差異が見られ、米国ではリスク性金融商品の種類によってコウホート別の所持パターンも異なっている、といった結果を得た。さらに、金融家計調査年報(貯蓄負債編)および「日経NEEDS金融行動データ」の2007年・2008年調査データを用い、金融規制緩和以降の金融資産選択行動とリーマン・ショックのインパクトの関係について実証した。消費者の金融商品選択行動を「金融リテラシー」と「コンサルティング情報希求」の水準を用いた4象限で分類することで、それぞれの投資態度やデモグラフィックの特徴が明らかにした。 以上のような複数の成果をとりまとめ、単著『金融行動のダイナミクス』(千倉書房)を2011年9月に出版した。
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