経営戦略に関する組織内コミュニケーションの実状と効果について実証研究を行った。事業部制やカンパニー制など戦略的事業単位(strategic business units)を持つ企業を選び、事業単位側から本社(あるいはグループ本社)に提供する管理情報について、事業単位の管理者が重要性を置く項目と本社サイドでの利用に対する期待感を、質問紙を用いて調査した。その結果、事業単位管理者は多様な非財務指標を管理情報として重要視していること、それにもかかわらず、本社サイドに対しては財務成果に比重を置いた評価を期待する傾向が強いことを発見した。また、これらの傾向と環境条件の影響関係についても検証を行った。たとえば、非財務指標を重要視する傾向は、事業部の数が多く、多角化が進んだ組織では強くなるという仮説を立て、調査データを用いて検証したが有意な実証を得ることができなかった。 事業単位の管理者側からのコミュニケーションの調査だけでは不十分であるので、次の段階の研究として本社サイドからのコミュニケーションの実態とその評価について調査の準備を進めている。この調査では、本社スタッフが事業単位管理者にグループレベルの経営戦略を伝達しようとする際に、どのような評価項目を重要視するか、また、事業単位の実績を評価する際に、共通指標と個別指標をどの程度使い分けるかという点について、複数の仮説を検証することを試みる。 これらの研究成果は、平成23年度後半で学会報告および学会誌への投稿論文の形で発表する予定である。
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