本年度は、2011年度末に行った質問紙調査の回答データの分析と取りまとめをまず行い、また、この研究課題の最終年度として研究全体を振り返り、研究成果の概要をまとめる作業を行った。 質問紙調査は、上場されている日本企業の事業部や社内カンパニーなど事業単位組織の管理者を対象に、これらの組織から本社に提供される管理情報の利用状況や重要性について回答を求めた。この質問紙調査の結果から、事業単位管理者は非常に多くの非財務指標を管理情報として本社サイドに提供しているが、それにもかかわらず本社側では財務成果に比重を置いた評価を期待する傾向が強いことを発見した。また、これらの傾向と環境条件の影響関係についても検証を行った。たとえば、多角化が進み事業部門数が多い組織では、事業内容の多様性に対応した評価を行うために非財務指標を重要視する傾向が強くなるという仮説を立て、調査データを用いた検証を試みたが今のところ有意な傾向値を得ることができていない。 また、後者については、階層化された企業組織の中で予算が果たすコミュニケーション効果について取りまとめ、組織構造からの制約と環境変化に対応してコミュニケーション効果が確認される点を研究成果として主張することができた。 後者の成果については、「管理会計研究の現状と課題」と題する論文に収録し、この論文は管理会計学会誌「管理会計学」に採択され、近々掲載予定である。また、前者の研究成果については、論文「予算管理の組織的課題」に取りまとめ査読付きの学会誌に投稿中である。
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