日本における非営利組織体の代表的組織といえる社団・財団(旧民法上の公益法人)について、2008年12月より新たな制度が施行されている。この新たな制度における重要な要素は、法人格の付与と公益性の認定を分離することにある。しかしながらなにをもって公益性があるのかについては、議論の余地がある。一般に「公益」とは、不特定多数の者に対する利益を指すと理解されている。ここで問題となるのが、不特定の者の意味と多数の者の意味である。前者については直接的受益者と最終的受益者が異なる場合(間接的不特定の受益者が存在する場合)が検討されなければならない。たとえば、障害者を対象とする新たな有効な教育方法が開発され、それを習得するための講習会が限定されたメンバーを対象に行われるが、それらメンバーはそれぞれの施設でその手法を実施することが確実であると判断しうる場合が該当する。また後者については、現時点では少数の受益者であるが、潜在的に多数の受益者の可能性がある場合が検討されなければならない。たとえば、めずらしい疾患の研究を行う場合、その疾患がめずらしいが故にその受益者が現時点で少数であることは明らかであるが、その疾患にかかる可能性を多くの者について否定できない場合が該当する。このように、不特定多数の者にとっての利益の判断は、単純ではない。さらに不特定多数の者にとっての利益を公益として理解するならば、電鉄会社や電力会社等の事業もまた公益といえるであろう。そこで、公益認定を行い、なんらかの社会的優遇(具体的には税制優遇)を与えるという観点からは、間接的受益者や潜在的多数の受益者を考慮した上で、政府の失敗や市場の失敗が生じるような場合に限定して、公益性を判断する必要があるものと考えられる。
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