研究概要 |
本研究では、わが国におけるBSC(バランスト・スコアカード)導入企業において、BSCと結びついた報酬システム(成果連動型報酬制度)がいかに構築・活用され、どのような効果をあげているのかについて,アンケート調査等にもとづく実態調査をとおして明らかにし、BSCと結びついた効果的な報酬システムに関するフレームワークを構築することを目的としている。本年度の研究では,昨年度実施したアンケート調査結果と2009年に実施したアンケート調査の結果の分析を行い、BSCとMBO(目標管理制度)と報酬システムに関するわが国企業の実態を明らかにした。すなわち,わが国企業においては,BSC導入に際して成果連動型の業績評価を目的としている企業は約35%であり,その導入効果を実感している企業は約24%程度,実際にBSCの指標の達成度と報酬を結びつけている企業は約41%に過ぎないことから,わが国企業においては,BSCと成果連動型の業績評価/報酬システムとの結びつきはあまり重要視されていないと考えられる。一方,MBO導入企業においては,「成果連動型の業績評価の徹底」を導入目的としてあげている企業が約67%,その導入を効果的と考える企業が約57%,実際に目標の達成度と業績評価を結びつけている企業が約71%,目標の達成結果を各種処遇に結びつけている企業が約89%であることから,MBOと成果連動型業績評価/報酬システムとの結びつきは,わが国企業において広く行われ,一定の効果をあげていることを明らかにした。その上で、MBOとBSCを結びつけて導入している企業においては,BSCの指標の達成度と各種処遇を結びつけている企業が約88%に達すること,またMBOとBSCの併用に対して効果的と考える企業が75%であることから,わが国企業においては,両者の併用を通じた戦略マネジメント・システムとして活用することが効果的と考えられる点を指摘した。
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