研究概要 |
日本企業における管理会計実践が経営理念とどのような関係にあるのかについて,(1)ケーススタディに基づいて経験的に調査しマネジメントコントロールのプロセスを構成するメカニズムと動因を解明するとともに,(2)経験的調査に基づいて日本企業の実態に即したマネジメントコントロールの類型化をはかり,(3)マネジメントコントロールと組織成員のモチベーションの関係を明らかにするためにアンケート調査に基づく研究を遂行するため,これまで2年間の調査に引き続き本年度は、(1)京セラ,京都信用金庫の協力を得て,ケーススタディを実施,(2)京セラ,村田製作所,京都信用金庫のそれぞれのケースについて得られた知見をドラフトペーパーにまとめて国際学会において発表,(3)過年度に実施したアンケート調査に基づく分析について論文を発表した。これらによって,経営理念と会計コントロールの関係について,管理会計システムと経営理念とが組み合わされて組織の各段階で体系的に利用されていることや,マネジメントコントロールシステムの利用において社会的な感情エネルギーの次元が重要な役割を果たしているといった、これまでにない新しい知見を得ることができた。また,経営理念に基づくコントロールと会計コントロール等を組み合わせ理解するコントロール・パッケージの観点から,コントロールの類型について分析を進め,組織文化とコントロール・パッケージの組み合わせに一定の関係があり,組織成員の目標達成意欲に影響を及ぼしていること、さらにCSRといった企業の社会的意義を明確にする活動が組織成因のモチベーションにプラスの影響を与えていることなどを示唆する結果が得られた。
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