研究概要 |
本研究プロジェクトは、現在において、また過去においても大きな問題であり、企業会計の宿痾とも言うべき不正会計関連する諸問題について歴史的視角から国際比較分析に基づく研究を展開するものである。最終年度はそれぞれの研究者が,各自のテーマをまとめ上げ,最終報告に向けて活動を行うという年度であった。 研究代表者の中野は,古典的バブルの一つに数え上げられる18世紀前半に起こった南海泡沫事件について史料集を行い,その成果を「18世紀英国の金融不祥事と会計監査-「南海の泡沫」(1720)とスネルの「監査報告書」-」にとりまとめた。バブル崩壊後に提出された「監査報告書」を検討し,それが被疑者たる経営者を擁護するという役割を担うものであり,会計士という職業に対するネガティブな関与が古くから存在していたことを明らかにした。 研究分担者の橋本は,前年度に引き続き,平成24年2月にオランダ国立公文書館に出張し関係史料の収集を行った。連合東インド会社とチューリップバブルの直接的関係は見出せなかったものの,株式会社の嚆矢たる同社において,会計不正がその初期から問題となっていたことを見出すことができた。現在,本研究課題の研究成果の一部として,「株式会社の生成と会計不正(仮題)」と題する論文を,本年9月発刊予定の『商経論叢』(近畿大学)第59巻第1号に掲載すべく執筆中である。 研究分担者の清水は,前年度に引き続き大恐慌に端を発するアメリカの会計規制の中で忘れられがちな公益事業会社の会計問題について史料の収集を行った。現在,「会針不正と1935年公益事業会社持株会社法(仮題)」と題する論文を,本年8月刊行予定の『国民経済雑誌』第206巻第2号に掲載すべく執筆中である。 研究分担者の三光寺は過年度に提出した論文(「18世紀初頭フランス東インド会社の再建と収支予測の変遷」)の査読が完了し,ジョン・ロー・システム崩壊後のインド会社の再建についての論考が公刊された。 また,研究者の杉田はイギリス東インド会社の内部管理の問題を,「資料:ロンドン東インド会社における棚卸資産評価の実態-1664-1713年の会計帳簿を対象として-」として刊行した。
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