研究概要 |
本年度では,財務報告が提供する情報を,(1)財務諸表本文,(2)注記,(3)財務諸表外の情報に整理した上で,注記の位置づけに関して,理論上,制度上,開示実態上,実証分析上で検討してみた。 [理論上]当期の財務諸表を理解するために関連性がある場合には,記述的説明に関する情報を含めなければならない。注記は,財務諸表本文に表示する情報を補足あるいは追加(補完)する情報を含み,財務諸表を構成する。そこでは,(1)記述的説明あるいは(2)財務諸表項目の明細に加えて,(3)各計算書における認識の要件を満たしていない項目についての情報を記載しなければならない。 [制度上]注記には,4つの主要な計算書の注記事項とその他の注記事項に加えて,早期適用が認められている注記事項が含まれる。さらに,利害関係者が企業の財政状態,経営成績およびキャッシュフローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる追加情報についても注記で開示する必要がある。それらの多くは,国際財務報告基準(IFRS)と同等と認められる新しい基準に関する注記であるが,制度上,注記に関する明確な記載要件はない。 [開示実態上]偶発事象に関連する訴訟事件を採り上げてみた。その結果,注記および財務諸表外の情報は,財務諸表本文(脚注除く)を補足あるいは追加(補完)する情報であることが判明した。しかし,注記と脚注の区分,あるいは注記と財務諸表外の区分は必ずしも明確ではないことも判明した。 [実証分析上]上述の研究を踏まえ,各企業の注記と財務諸表外の情報に対してテキストマイニングの手法を用い,定量的に分析する。まず,キーワードの頻出傾向やキーワードの間の関係性を調べ,さらに,企業ごとの注記と財務諸表外の間の類似性なども調べる。来期に本格的な分析を行う。
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