本研究の目的は、財務報告におけるフォーマット効果の存否を確認することである。そのため、1)外国人投資家保有割合に注目し、OECD諸国の上場企業の利益数値にかかるクロスセクション分析により検討することと、2)我が国上場企業を対象としてフォーマット効果を個人投資家の投資行動との関係で分析している。今年度は、1)については各国の文化的特性を変数に取り込むことにより、フォーマット効果の国別差異を明確化することをめざし、先行研究のレビューとデータセットの調整を行った。また、外資系機関投資家が、データベンダーの提供するグローバルに標準化された財務数値と我が国会計基準に基づく報告数値とをどのように使い分けているかについてもヒアリングを実施した。本年度において中心的な活動は、研究計画に沿って2)に関連した個人投資家の財務情報利用パターンの把握であり、個人投資家へのヒアリングを受けて、ウエブベースの予備的個人投資家向けアンケート調査の質問項目をし、実際に当該年度中に予備的調査を実施する予定であった。このヒアリングの目的は、既往の個人投資家向けアンケート調査で、個人投資家も投資意思決定に財務数値を一定程度活用していることが示されており、様々な情報の中で財務情報を彼らが特に重視する状況と、財務報告の枠組みが大きく変化するIFRS導入に関する認識について、アンケートの適切な設問項目を設定することであった。しかし、ヒアリングを重ねていくうち、既往の調査では十分配慮されていなかった個人投資家の会計数値に関する知識レベルと利用状況の関係や、財務数値を活用するグループの投資スタイルの独自性の存否等について明確にしなければ、本研究の目的にとって有効なアンケート調査は実施できないと判断し、さらなるヒアリングを実施した。この結果、一つの切り口として投資家サイドの株主優待に関する意識やその取り扱いに一定の規則性がある可能性が明らかになった。
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