申請課題では、IFRS導入の際に日本企業に生じる痛み(すなわち、コスト)について分析し、同時に、日本企業が受けるであろうベネフィットを、上場企業の財務担当取締役(CFO)の目を通して発見することを目標としていた。 IFRS導入事前調査を行った。質問票調査の結果から、回答企業の多くが広範にIFRS導入による負担や手間の増加を捉える一方で、海外進出企業はベネフィットを捉えた。経営(戦略)に対する影響は、中立を捉えた。また、一部上場企業と二部上場企業・新興市場上場企業のコスト・ベネフィットの捉え方に差異が認められた。これらは英語で論文を執筆し、国際学会(ヨーロッパ会計学会他、3つの国際学会)で報告した。 IFRS導入がもたらす会計手続選択の変更が、日本企業が望んでいる会計規制の方向性と対称的か(あるいは非対称的か)を確認し、理論的に検討することを目的としていた。会計規制改革と関連付けて、特に会計基準に関して、どの会計基準のコンバージェンスにどの程度困難を伴うのか、反対にどの会計基準は困難でないのかを特定した。前者には、過年度遡及修正、収益認識、業績報告(財務諸表の表示)、退職給付があることがわかった。日本企業の分析結果を、ICAEWが行ったEU調査およびシドニー大学とニュー・サウス・ウェールズ大学が行ったオーストラリア調査と国際比較し、コンバージェンスのあり方・進め方に対する含意を抽出する。この理論研究の結果は、成果公表物として、小津・梅原(2011)にまとめた。
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