我々の研究課題は、「グローバリゼーションと税制」であり、グローバル経済の環境下において、租税が納税者の経済活動における意思決定に影響を与えているのか否か、与えている場合にはどの程度か、与えていない場合にはその理由を、実証的に検証しようと試みています。平成22年度の成果としましては、論文1本と学会報告1本です。 雑誌『會計』10月号に掲載された論文「企業買収ストラクチャー選択に租税が与える影響」では、M&Aのうちの企業買収について、現金買収であるTOBと株式を対価とする株式交換では、課税が異なることに着目して検証を行いました。検証では、買収会社の限界税率が高いほど、資金調達に伴う借入金支払い利息損金算入の節税効果が得られるTOBが選択されると仮説を立てたところ、仮説を支持する検証結果を得ることができました。しかし、被買収会社株主については、キャピタルゲインが多いほど課税の繰延効果がある株式交換が選択されると仮説をたてましたが、有意な結果が得られませんでした。以上の結果から、買収ストラクチャー選択においては、買収会社の課税状態が反映されているとの検証結果を得ることができました。 日本会計研究学会での学会報告「利益連動給与採用の決定要因」では、上場会社役員の給与について、会社法の業績連動型報酬を採用している会社のうち、法人税法の利益連動給与を採用するか否かの決定要因において、法人の課税状態が影響を与えていることを検証することができました。
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