我々の研究課題は、「グローバリゼーションと税制」であり、グローバル経済の環境下において、租税が納税者の経済活動における意思決定に影響を与えているのか否か、与えている場合にはどの程度か、与えていない場合にはその理由を、実証的に検証しようと試みています。平成23年度の研究成果としましては、論文が2本あります。 雑誌『會計』11月号に掲載された論文「利益連動給与採用をめぐる実証分析-平成18年度税制改正が与える影響-」は、平成14年商法改正で導入された業績連動型報酬および平成18年度税制改正で導入された利益連動給与を企業が採用する際の決定要因を分析した論文です。利益連動給与制度は、業績連動型報酬に、支給の透明性・適正性を確保するための一定の要件を課したうえで、損金算入を認める制度です。そこで我々の研究では、第一段階として、業績連動型報酬を採用する企業と採用しない企業をサンプルにして、業績連動型報酬制度の採否の決定要因を分析したうえで、第二段階として、業績連動型報酬を採用している企業をサンプルにして、利益連動給与の要件に適合している企業(利益連動給与制度を採用している企業)とそうでない企業の決定要因を分析しています。そして、第一段階の業績連動型報酬の採否では影響を与えなかった税金変数が、第二段階の利益連動給与の採否では有意な関係を示していることを明らかにしています。 雑誌『税務弘報』3月号に掲載された論文「日米比較にみる確定給付企業年金の税制優遇規定」は、確定給付企業年金について、日米の税制を比較検討し、主にアメリカの先行研究を整理した論文です。
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