研究概要 |
本研究では、SEC基準適用日本企業データを用いて各利益の質評価尺度における内部統制報告制度による影響を分析した。本研究の結果、SOX法適用以降会計的裁量行動が減少し実体的裁量行動が増加したこと、機会主義的会計的裁量行動が抑制され、情報伝達目的の会計的裁量行動だけが存在するようになったことを発見した。また、本研究において、裁量的発生高、予測誤差、会計発生高の質という利益の質評価尺度を横断的な分析によって、経営者の各裁量行動が情報伝達目的か機会主義的目的かを把握し、内部統制報告規制が経営者の裁量行動の背後にある目的を変化させた可能性を解明することができた。こうした研究成果は、著書『利益の質とコーポレート・ガバナンス-理論と実証』として刊行した。さらに、拙著で示した予測誤差と会計発生高の質との関連性に基づいて経営者の裁量行動の意図を把握するモデル(中島(2010)モデル)を重要な欠陥開示企業データに適用し、重要な欠陥開示企業の裁量行動が機会主義的なものである可能性が高いことを提示した。本書第6章および第7章で示した利益の質評価尺度についての実証分析研究および重要な欠陥開示企業に対する中島(2010)モデルの適用分析研究は、2011Annual Meeting of American Accounting Association(in Denver, Colorado)のコンカレントセッションに受理され、8月に口頭報告を行う予定である。共同研究「内部統制およびコーポレート・ガバナンスと監査」(代表者:須田一幸早稲田大学大学院教授)は今年も継続して実施され、サーベイ調査研究結果は2011年に『會計』で2回に分けて掲載される。
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