本研究の目的は、利益の質評価尺度に関する理論的な検討をふまえ、利益の質評価尺度の内部統制報告制度による変化と、その変化の決定要因を解明することである。2009年度は、SEC基準適用日本企業データを用いて分析を実施した。次年度は、初年度成果を著書として刊行した。最終年度は、裁量行動が情報伝達目的か機会主義目的かを判別する中島モデルの汎用可能性を重要な欠陥開示企業に適用して検証を行い、その成果の日米発信であった。当該結果は次のとおりであった。「(1)予測精度と会計発生高の質問の有意な関連性から、重要な欠陥開示企業の裁量行動が機会主義的意図を有する可能性が高いこと、(2)裁量行動が機会主義意図を有するの頑強性とその裁量行動が会計的か実体的裁量行動かに関する検証結果から、裁量的発生高が会計発生高の質と有意な関連性があり、重要な欠陥開示企業の裁量行動は会計的裁量行動であり機会主義意図を有する可能性が高い。」この成果論文は、米国会計研究学会年次大会(コロラド州デンバー市)(国際会計、財務会計部会にも受理)口頭セッションに受理されたので報告した。特に中島モデルについては不正・法廷会計部会会長から連絡があり、当該成果にたいする着目度の高さが窺えた。また、同年日本経営分析学会関東研究部会(立教大)および秋季大会(帝塚山大)で報告した。当該成果は、レフェリー雑誌『年報経営分析研究第28号』に投稿し受理され掲載された。また、共同研究「内部統制およびコーポレート・ガバナンスと監査」(代表者:故須田一幸早稲田大学教授)は、2011年にこれまでのサーベイ調査結果の日米比較を論文「内部統制および監査に関するサーベイ調査研究-日米上場企業の比較」として雑誌『會計』2回掲載分として公表した。さらに、最終年度に計画していた日本の上場企業データを用いた重要な欠陥開示企業とコントロール企業の企業属性の比較検討に関する実証分析は実施できた。
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