本研究の第三年度は、3年間の研究期間の中で、調査・分析研究を行うとともに、これまでの研究結果を分析し、本研究課題の解明を行う期間となる。本年度は、前年に引き続き、当初の研究計画を研究の進捗状況に従い修正しながら、これまでの基礎理論研究と調査分析研究を基にして、契約上の支払義務の会計処理の判断分析と会計処理の提案作業を行った。とくに、前年度までの作業に基づいて、解約不能な契約上の支払義務の資本化が監査人やアナリストの判断に及ぼす影響と、契約上の支払義務についてのありうべき会計処理・会計基準の在り方について、調査研究を共同で行った。具体的には、第一に、外国の研究者が財務諸表分析上、契約上の支払義務の会計処理について、どのような判断を下しているか調査した。これらの点に関して、国際会計基準の適用が進むオーストラリアの研究者(オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学(UNSW)のMalcolm Miller、Jeff Coulton、およびLeon Wong)へのインタビュー調査および意見交換を行った。第二に、米国会計基準や国際会計基準によって貸借対照表へ計上される契約上の支払義務(項目のみの本体計上され、金額は計上されず注記によって開示される項目と、これまで開示のみであった項目を会計基準を変更し認識する項目)にフォーカスして理論分析を行った。これらの調査・研究と、その後の成果分析を通して契約上の支払義務の会計処理、および「認識」と「開示」に関する会計基準の在り方に関する貴重な知見を得ることができた。
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