研究概要 |
国内外の資本市場において、(A)事業多角化(製商品・サービス分野の多角化)および(B)事業多角化(生産・販売拠点のグローバル化)が進展しているほど、株価が安値に陥っている,という現象が観察されている。かかる現象は,多角化ディスカウント(またはコングロマリット・ディスカウント)と称され,機関投資家およびアナリスト等,投資専門家の間で共有されている1つの見方である。本研究の目的は、(a)多角化ディスカウントは、実際、生じているかどうか、(b)いかなることが原因となっているかどうか、(c)多角化ディスカウントに陥っている企業群は,どのような会計情報開示行動あるいは経営行動をとるべきかどうかという3つの課題を実証的に明らかにすることである。 すでに、本研究では、第一に上記(a)については両多角化ともディスカウント評価されていること、第二に(b)については、多角化企業は情報の非対称性が大きいためにディスカウントされていること、第三に(c)については、質の高い会計情報を提供することによってディスカウント評価は緩和されるものの、非関連多角化など過度に多角化が進展している場合には情報開示効果は見られないこと、を発見し論文として発表している。 本年度は、上記(a)および(b)について別の視角から検証を重ね、これまでの検証結果が頑健であることを確認した。その成果を論文として執筆し、査読誌に掲載された。また、本研究課題に関連することとして、2010年3月決算期以降、日本企業のセグメント情報が刷新されている。本年度はその開示実態について計量的に把握し、その成果を論文としてまとめ、学会および雑誌において発表した。
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