研究概要 |
2011年の夏に,アメリカの公開会社会計監視審議会(PCAOB)は,監査人の独立性の強化を目指して会計事務所の任期制限を提案した。すでに2010年にヨーロッパ連合は,監査人の独立性の強化と監査市場の活性化を目指して,会計事務所の任期制限を提案し,2011年の11月末に任期の延長を最大6年までしか認めないことにした。欧米では,会計事務所の強制交代制度を積極的に導入しようとする気運が高まっている。しかし制度化が監査人の独立性を本当に強化し,監査市場の競争を促進できるかについて,検証はなお限定的でしかない。 この情勢を受けて,今年度も,監査法人の任期制限による強制交代が監査人の独立性を強化し,監査市場の活性化を促進するかについて,学生を被験者とした実験市場を用いて検証を続けた。実験では,強制交代を義務付けた市場と義務付けなかった市場の間に,監査人の独立性に関して大きな相違は生まれなかった。しかし,任期制限による単純な強制交代のみを実施すると,監査法人の強制交代が義務付けられない期間では,監査人の独立性が有意に低下してしまった。強制留保も義務付けた完全なローテーション制度では,この問題は生じなかった。また監査法人の交代の頻度は,強制留保だけを義務付けた市場でもっとも低くなり,任期制限のみを義務付けた市場でもっとも高くなった。監査法人の任期制限は,少なくとも監査法人の交代を促進し,監査市場の活性化に有効性があることが示された。
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