初年度は、本調査研究の基盤的な時期であり、具体的には、以下のような方法によった。 a.経営分析のベースとなる尺度としての会計制度・会計基準の採用についても精査した。開設主体でかなり会計基準が異なる状況を丹念に洗い出し、病院(経営者・財務担当・経理担当者)に訪問(インタビュー・ヒアリング)調査を積極的に実行した。b.研究のキーワードでもある「比較可能性」、「汎用性」とは何かについても明確にし、項目等の選定・絞込みを行ない、各開設主体のバランスをとりながら、病院に対して書面(アンケート)調査を協力、実施した。これについては継続中である。c.関連文献の収集を行った。国内文献については病院会計・経営分析にかかわる図書を基本としながらも、医療政策などのマクロ的な側面の関連図書等についてもサーベイした。結果として海外ジャーナルが多く収集できた。d.文献収集とあわせて、IT・メディアを活用した情報収集に取り組んだ。病院に関する財務データについては、厚生労働省および日本医療法人協会、日本病院会データベースの援用し、こうした公的機関等でのデータでは不足であり、統計的母集団の確保に対応する一策として、病院にかかわる財務データについては、企業系にも協力を要請した。 基本的に、今年度目標としていた研究課題全体の中での基礎的研究はおおむね達成されたのではないかと思う。当初計画に掲げていたいくつかのタスクはそれぞれ着地点に到達しているからである。 もちろん、順調というわけでもない。その成果を論文1本、発表1本しか公表できなかった点については課題とするところである。また、今年度実施のアンケート調査はいまだ継続中であり、早期の総括に入る必要の余地もある。これらについては真摯に受け止めたい。
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