本調査研究は、病院の開設主体(国立病院、国立大学病院、自治体立病院、私立大学医学部付属病院、医療法人、日本赤十字社、済生会、厚生連、社会保険立病院、医師会立、個人立)が多様な現状で、できうる限り比較可能性を担保した経営分析システムの確立を構想したものである。その構想の中で、これまでの研究実績を踏まえ、病院経営での経営分析の重要性を認識しつつ、10を越える病院開設主体の経営分析の運用実態を調査し、汎用性ある経営分析システムの実現に向けて研究することを目的とした。 また、本調査研究の遂行により、多様な開設主体が比較可能となり、病院経営の効率性、透明性に資する一助となった。そして、医療費の抑制、医療機能の向上などマクロ的な医療課題にも一石を投じる派生力のある研究として結実したのではないかと考える。研究計画の最終年度であったゆえ、1-2年目で行った経営分析のベースとなる会計基準の調査・開設主体が実際にどのような経営分析を運用しているかの実態調査を総括した。また、経営分析モデルの仮説を行った。前年度においても考察されているものの本年度も継続して行った。また、理論的な考察も達成した。経営分析はツールに終始する傾向があるが、分析目的、分析指標の定義・意義を検討し、有用性差が得られたと思う。また、とりわけ医業は、非営利であるため、公益法人会計、社会福祉法人会計など、病院と類似する性格を持つ周辺領域の会計主体にかかわる会計制度・経営分析を精査し、多方面から検討した。本調査研究は、主として会計学における経営分析と医歯薬学における医療政策分野とにかかわる学際的・複合的な領域である。1年目から心がけていたことではあるが、医歯薬学にかかわる専門用語、あるいは基礎的な考察として関連用語について明確な定義づけするとともに、それらの体系化を図った。
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