本研究の目的は、企業集団の財務報告基準に関連して、基礎理論との矛盾および企業実務の実態における問題から、現在進められている会計基準の国際的収斂が妥協の産物と化している状況を明らかにすると共に、基礎理論との整合性および企業実務への適用可能性の両方のバランスをとりながら会計基準を設定することが、投資者の意思決定に有用な情報提供に資することになることを明らかにすることにある。 このような研究目的との関連で、2010年度(第2年度)の研究成果は、2点に分けて説明される。 第1は、初年度に行った会計基準の国際的収斂により、会計情報の質が高まるか否かについての実証分析の結果を、日本経営分析学会、中国会計学会およびAsian Pactfic Conference on International Accounting Issuesにおいて、日本語、中国語および英語により報告した。第2は、IASBが概念フレームワークを公表したことに伴い、報告実体の問題を含めて、概念フレームワークの内容について検討した。第3は、企業集団財務報告におけるセグメント報告の位置づけおよび重要性について、マネジメント・アプローチの検討を行った。 これらの研究は、当該研究において、国際的収斂を視野に入れて、企業集団財務報告基準が投資意思決定に有用な情報提供に資するかについての研究の一部と位置づけられる。 次年度は最終年度になるので、企業集団の財務報告基準の投資意思決定有用性について、理論的整合性の検討と実証分析による証明を行うことで、体系的にまとめあげる予定である。
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