リーマン・ショック以降、金融商品のリスクや不確実性の影響が国際的に社会的・経済的に極めて大きくなったことから、金融規制改革法(Dodd-Frank法)がアメリカでは制定され、当該リスクや不確実性の程度を具体化する格付け情報や当該リスク分析に不可欠な財務情報の監査報告に対する見直しが、国際的なIAASBやアメリカPCAOBが継続的に行なわれてきた。 本研究では、このうち監査報告が提供する財務情報に対する信頼性の水準に着目し、(1)リスクに関する情報が金融商品取引を誘引するためにどのような役割を果たすのか、(2)当該リスクの顕在化後、すなわち損害の発生後にリスクに関する保証情報がどのような効果を持ち得るのか、そして(3)金融商品市場で開示が望ましいリスクに関する保証情報の内容と特性、ならびに保証水準を明らかにしようとした。 この結果、リスクに関する保証情報たる監査報告の存在により、投資者は自らの投資に伴うリスクを監査人に転嫁することが可能となり、ヨリ安全かつ適時に投資できる環境が整備され、投資が誘引される。またこの場合に監査報告が提供する保証の水準は、監査人の心証である財務諸表の信頼性に関する確信度であるが、監査人の確信度は、監査(保証)の対象の性質や内容と、監査(保証)のために費やされた資源量に関連した。さらにリスク顕在化後の損害発生後に監査人が負担し得る損害の範囲は、監査業務における過失の程度や独立性違反の程度を反映する形で決定されるものの、各国の法規制や法廷の判断によって異なることが明らかとなった。
|