四半期決算情報を活用して、経営者の財務行動を説明することが研究課題である。在庫管理の適正化が業績改善に資する点および売上債権と仕入債務の適切な管理が資金管理に資する点が経営実務の基礎知識と位置づけられている。しかしながら、会計学者がこれらを明確に関連づけて研究教育に従事しているとは思われない。そこで、3ヶ月毎の棚卸資産、売上債権、そして仕入債務との関係に着目し、上述の妥当性を実証したい。本研究が財務報告と投資家との関連性を強く意識している国際財務報告基準の趣旨に合致するとともに公表が制度化された四半期財務諸表に対する今後の体系的研究のための予備研究として位置づけることができる。 前述の研究課題に基づいで本年度に行ったことは(1)信用取引のメカニズムを文献研究によって探究したことである。米国の主要大学に提出された学位論文をいくつか検討し、米国における信用取引の比較的初期の形態の特徴を明らかにした。これら信用取引に関する先行研究の含意を念頭におきながら、(2)短期流動性を管理するツールの一つであるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの属性を規範的に検討し日本会計研究学会(全国大会)で報告した。さらに、(3)実証分析を実施するために、四半期連結決算短信から必要とする財務データを収集し、データ・ベースを作成した。これは四半期単位で経営者が短期流動性の管理状祝を分析する研究を実施刷るための準備である。最終年度である平成23年度は当年度に作成したデータ・ベースと更新データを活用して実証分析をいくつか実施し、本研究をまとめたいと考えている。
|