本年度は、研究計画の(1)意味システム論の理論的研究に関して、特に大きな成果があった。意味システム論については、社会的な事象への適用条件がまだ明確になっておらず、そのため理論固有の性能を十分に活かしてきっていない。その点をめぐる考察を複数の論文にまとめて、専門学術誌と一般的な雑誌それぞれのいくつかの媒体で公表した。これらは都市をめぐる自己産出の研究にとっても重要な基礎づくりになるだけではなく、研究成果の一般社会への還元にもなっている。 研究計画の(2)具体的な比較対象都市の選定と実地調査に関しても、大きな進展があった。歴史的な比較可能性などを詳細に検討した結果、アメリカ合衆国のサンフランシスコ市とその近郊を、日本以外での主な比較対象都市として選んだ。さらに研究計画の一部を一年次先倒しして、本年度で現地の実地調査にも着手した。その結果、今後の研究遂行に役立つ多くの資料と知見をえることができた。 国内に関しても、東京の実地踏査を定期的・継続的に進めつつ、京都の実地調査と資料収集にも着手した。その結果、都市域の作動的閉鎖的形成と地形との関係について、有意義な考察を進めることができた。
|