本年度は、研究計画の(1)意味システム論の理論的研究に関して、昨年度からの作業をさらに進展させて、その成果をいくつかの媒体で公表することができた。 特に重要なのは国際社会学連合International Sociological AssociationのプロジェクトであるSociopedia.ISAに寄稿したFunctionalism:its axiomaticである。この論文では、これまで断片的にしか理解されてこなかった1970年代以降の機能主義の理論展開について、意味システム論的視座から統一的な枠組みを提示し、主観主義社会学と客観主義社会学の不毛な二項対立を解消する途を示した。社会学の場合、非数理系の理論的研究で国際的に参照される成果は、圧倒的に欧米系の研究者によるもので占められ、日本人の著者によるものはほとんどない。その状況のなかで、社会学の主流学説である機能主義理論をめぐって、著者のものだけでなく、関連する他の日本人研究者の成果もあわせて紹介できたことは、国際的な発信という面でもきわめて大きな意義がある。 さらに、研究テーマに隣接する関連分野でも、日本語の論文を公表することができた。 研究計画の(2)具体的な比較対象都市の実地調査に関しても、京都でのフィールドワークを進め、経験的な分析の面でも着実な進展があった。
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