研究課題/領域番号 |
21530495
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
友枝 敏雄 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30126130)
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キーワード | 個人化 / リスク社会 / ベック / 第2の近代 / 公共性 / 公共空間 / 正義 / 不幸の減算 |
研究概要 |
本年度は4年間にわたる研究期間の3年度目なので、5つの研究課題のうちの次の2つの課題を実施した。 I「ポストモダン論」と「グローバリゼーション論」の検討 20世紀から21世紀への世紀の転換期における社会学の<知>は、2つの焦点をめぐって構造化されてきた。その1つが、現代をポストモダニゼーションの過程とみなす「ポストモダン論」であり、もう1つが、現代をグローバリゼーションの席巻過程とみなす「グローバリゼーション論」である。そこでポストモダン論およびグローバリゼーション論の再検討をとおして、「第2の近代」を捉えるのに有効な社会学的概念としてベックのリスク社会論であることが明らかになった。 II新たな絆(=社会的連帯)の端緒として「公共性」の理論的考察 社会学誕生以来のテーマである「個人と社会」の問題を解決するキーワードは、社会的連帯である。社会的連帯の可能性は、公共性概念の彫琢によって明らかになる。そこで公共性概念の吟味を行った。まず公共性とほぼ同義な英語として、public sphere、public space、publicness(日本人による造語)があることに注目し、公共性(=公共空間)が、第1にmarket(市場原理)に対立するものとして、第2にnationalなもの(国家・国境)に対立するものとして、第3にindividual、individualizationに対抗するものとして概念化されることを明らかにした。さらに公共性が「公共善」に関わるものであるから、正義の問題について考察した。「正義は存在するか」という問いから出発して、正義の積極的な定義の可能性として、「社会に存在する不条理な苦痛を減ずる価値」および、すでに市井三郎、高坂健次によって言及されている「幸福の加算から不幸の減算へ」という価値観の転換の重要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的考察を積み重ねているが、うまく展開できていない部分もある。しかし、「社会」イメージを明瞭化するためのステップとして、公共性概念と正義概念について、検討することができたので。おおむね順調に進展していると言ってよいであろう。
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今後の研究の推進方策 |
4年間の研究期間のなかで実施予定の、意識調査の内容を若干変更して、正義・価値・規範の問題に直結する規範意識調査として、24年度に実施する予定である。
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