研究概要 |
本研究の目的は、「第2の近代」に突入した日本社会における人々の社会観の特色を計量データの統計分析によって明らかにした上で、21世紀における社会をどのように構想したらよいかについて社会学の視点から、基礎的研究を行うことにある。最終年度の今年度は、次の3つの課題を実施した。 第1に、新たな絆(=社会的連帯)の端緒である「公共」問題を議論する際のキーワードとして、Public, Publicity, Publicnessの3つがあることを指摘した。この3つについて理論的な検討を行った後、公共性が、(1)market(市場原理)に対立するものとして、(2)nationalなもの(国家・国境)に対立するものとして、(3)individual,individualizationに対抗するものとして、概念化されることを明らかにした。 第2に、これまで2回(2001年、2007年)にわたり、高校生を対象に実施してきた規範意識調査(質問紙調査)を、成人(20歳から69歳までの全国の男女、1500名、ネット調査によって実施)を対象にして実施した。その結果、(1)社会観について、高校生よりも成人の方が保守的な意識をもっていること、(2)幸福度について、①女性の方が男性よりも幸福度が高いこと、②世帯収入が主観的に高いと思っている人の幸福度が高いこと、③家庭生活のへの満足度が高い人の方が幸福度が高いことが明らかになった。 第3に、「第2の近代」において、正義を消極的に定義すると、「不正義でないもの」となり、積極的に定義すると、「不条理な苦痛を減ずること」および「社会的弱者を擁護すること」となることを示した。正義概念とケアの概念との親近性を検討した後、グローバリゼーションと個人化の進行する21世紀において、公共性と正義を中核的な原理とした社会を構想することの可能性について理論的な展開を試みた。
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