本年度は、本研究課題遂行の中間点として、まず、理論的検討の成果をまとめた1冊の著作を出版し(『社会の思考-リスクと監視と個人化-』学文社)、2編の論文(「〈個人と社会〉再考-「と」の理論と現在-」、「モナドロジーと社会学-意識システムとモナド-」)と4つの研究報告を行った(シンポジウム報告2本、招待講演2本):以下の業績表を参照。 とりわけ日本社会学史学会大会(奈良女子大学)シンポジウムでの報告(「〈個人化〉する社会の個人」)と、ウルリッヒ・ベック来日記念シンポジウム(一橋大学)での報告と討論(「個人化論の位相:「第二の近代」というフレーム」)は、科研課題の焦点がどこにあるかを確認する上で、この後の研究発展にとって重要な節目となった。 また、8月には韓国のインテンショナル・コミュニティの調査を実施し、個人と社会の交差する場としての新たな共同体形成の現場に触れることができた。 ここまでの研究によって、個人と社会を分離して考えることの現代社会学的重要性について、十分な歴史的・方法論的な検討を加えることができたと思われる。同時に、近年の社会学的重要テーマである「リスク社会」と「監視社会」が、どのような形で「個人化」ならびに「個人と社会が〈切れて〉ゆきつつあること」と深く結びついているかを検討することができた。
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