本年度の研究計画は、前年度に収集した資料を解読することと、さらに補充資料を集めることだった。現代社会の社会統合問題をめぐっては重要なテーマなので様々の大きなシンポジウムが欧米においても開催されており、その会議レポートについても可能なかぎり収集した。研究代表者は社会学説史からの問題へのアプローチを担当しているが、その成果の一部を日本社会思想史学会の学会誌に発表する一方、社会の存立の仕方をめぐるこの百数十年の論争を対象とするG.ジンメルの「社会はいかにして可能か」を分析の焦点とした長編の論文(400字原稿用紙250枚余り)の連載を本務校紀要に始めた。三分割の予定でこの一年にわたって完成を目指す予定である。本科研の報告書にはさらにこの論文の後編を補充してN.エリアスやN.ルーマンの社会理論における社会統合問題をも含めた議論を計画しており、すでに本年度から集中的な準備を始めている。社会学のみならず、経済学や政治学におけるグローバル化にかかわる統合問題の議論も調査しつつある。 連携研究者達は来年度における研究成果を学会において発表する準備を進めている。 連携研究者達は、パーソンズ以降の社会統合問題と現代型の社会的コントロール概念のすり合わせというテーマで、主に前年度に収集した文献の解読を行ってきた。現代型の社会的コントロールの様態が、従来の社会学における「社会統合」の概念に対して、どのようなインパクトを与えるかというテーマを中心に、学会報告をする用意をととのえつつある。
|