台湾におけるボランティア団体に対するアンケート調査を、昨年度実施した日本のボランティア団体の実態と比較するために、台北市と台北県の社会服務慈善団体名簿より450団体を抽出し、郵送法にて実施した。回収票は現在までのところ78票で、住所等不明の調査票を除去した有効回収率は17.6%である。 第2に、児童を家庭で保育する「保育ママ制度」に関して、日本における先進的な取り組みを行ってきた東京都江戸川区において聴き取り調査を実施した。日本の保育ママ制度に類似した制度は、台湾では「ベビーシッター制度」と呼ばれ、インフォーマルに広く浸透しており、保育者を管轄する台北市保母協会に対しても聴き取り調査を行った。 近年この制度は、日本においては国が「家庭的保育事業」とし、台湾では公的に制度化されてきたことから、保育者の資格をめぐる問題や、保育者と行政、公的施設、および地域における子育て支援ネットワークとの連携が、今後の重要な課題となることが明らかとなった。 第3に、台湾のボランティア活動に関して、日本統治時代に創設された貧困者の救済施設愛愛寮(現・財団法人台北市私立愛愛院)、高齢者支援の地域福祉的モデルといえる、祖先を同じくする地域共同体の台北県淡水鎮の蔡家村、および、アンケート調査に回答を寄せられた団体に対して聴き取り調査を実施した。 これらの台湾におけるボランティア活動の実態から、東アジアにおける固有のボランタリズムの基層構造として、親族ネットワークと地縁的ネットワークの累積した公共領域における共同性が潜んでいることが解明された。 第4に、台湾国立政治大学社会科学研究科主催の国際シンポジウムに招聘され、近代化とボランティア団体の家族支援における可能性に関する研究発表を行ったほか、東アジアにおけるボランタリズムの基層構造に関する考察結果や、保育ママ制度に関する研究報告を国内の学会においても行った。
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