1.日本と台湾においてボランティア意識に関するアンケート調査を、子育て支援団体「山口ファミリーサポートセンター」の会員全体、及び、日本と台湾の大学生に対して実施した。センター会員調査は郵送法で行い、196票が回収され、回収率は21.3%であった。大学生に対しては集合法で調査を実施し、日本の学生からは238票、台湾の学生からは380票を回収した。それらのデータを比較分析した結果、ボランティア活動の経験には国別の違いはみられないが、日本では行政の要請が大きいのに対して、台湾では、ボランティア活動への目的意識が明確で、ボランティア意識も日本より高いことがわかった。 2.台湾において、淡江大学の学生ボランティア団体、及び、民間のボランティア団体に対する聴き取り調査を行った。いずれも、主体的な団体形成の態度が明確で、民間の基金会が、活動を経済的に支援しており、これらの基金会や行政からの支援に加えて、個人の寄付も積極的に行われていることが明らかとなった。 3.「企業のボランティア活動に関して、[台塑グループ]の運営する、高齢者施設「長庚養生文化村」における聴き取り調査を実施した。この施設では、高齢者が可能な限り文化的な生活を持続する仕組みが模索さていた。 4.これまでの台湾における調査から得られた知見をもとに、台湾における調査協力者と意見交換会を行った。その結果、ボランタリズムは近代化とともに促進される個人の自発性に依存するものではあるが、東アジア社会においては、血縁的、地縁的、その他のさまざまな縁による社会的ネットワークに支えられており、台湾ではその基盤がより明確であることが明らかとなった。
|