本研究の主要な目的は、21世紀初頭欧米諸国でも観察されたポピュリズムについて、日本における特異例として、現象としての東京都知事石原慎太郎」を経験的データにより再構成するということにあった。 このために、(1)知事についてのイメージ(非政治的領域)、(2)知事についてのイメージ(政治的領域)、(3)オリンピックとその招致について形成されるイメージ、(4)都市東京についてのイメージ(「利便性」「経済性」その他)、(5)日本の政治状況(国政ならびに重要な地方首長選挙結果についてのイメージ形成)を主要変数とし、技巧を凝らした質問紙を設計し、平成21年から23年度、各年度2回ずつ、計6回のインターネットを介したパネル法調査により時点比較可能な時系列データを収集した。 調査期間中、オリンピック東京招致運動とその失敗、国政における自民党から民主党への政権交代、内閣総理大臣の繰り返しの交代、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所大事故、東京都知事四選出馬当選など、特異かつ重要な出来事が発生し、これに関連させて他に類例のないデータを収集することができた. 調査途中のデータを用いて、ドイツ日本社会科学会大会においても報告を行ったが、3年の調査期間終了により完結したデータをもとに、とりわけ選挙民に形成されていった諸イメージとその変化について再構成を行いモデル化することが可能となった。石原慎太郎支持者には、年齢変数が大いに影響していることはこれまでも確認してきたが、オリンピックに関わる事象についても、別なふうに年齢別、性別の差異を確認することができた。また国政上重要な政治家について選挙民が抱くイメージについても時点ごと変化を確認できるデータを得た。これを背景にしつつ、現象としての「東京知事石原慎太郎という経験的社会科学研究をまとめ段階にある。
|