本研究の目的は、現代日本における人びとの身体観、身体に関する意識と身体への向き合い方を探究し、その社会的意味を問い、問題提起していくことである。昨年度の作業(身体に関する日常知へのアプローチとして、主に文献研究から、現代社会に流通する身体に関する日常知の様相、その特徴の把握を試みた)を踏まえ、本年度は、身体への諸個人の向き合い方、身体に対する意識、身体管理に関する実際的な活動へのアプローチとして、自己の身体管理にかかわり様々な知識と技術を身につけ具体的な実践を行っている人びとを対象に、質的・半構造化インタビュー調査を行った。対象者は、身体管理に関して非近代西洋医学的な知・技術を身につけ実践している人びと(ヨガ、気功法、アロマテラピー等々)を機縁式で選んだ。主な質問項目は、(1)身体のために行っている実践・活動の内容詳細、実態、およびそれらを行うようになった経緯、(2)自己の身体の状態について意識すること、感じていること、(3)身体管理に関する情報接触、知識、(4)現代社会、現代人の健康、身体管理に関する問題意識等である。得られたデータを文字化し、身体への向き合い方、身体観について分析に着手した。 その結果、自己の身体に対する関わり方として大きく2通り(2方向)の関係が浮かび上がってきた。1つは、自己による身体への操作的、道具的な関わり方、もう1つは、逆に身体の方が主導的な、自己と身体の関係である。インタビューでは、とりわけ後者の関係に基づく身体観が浮かび上がってきた。この知見を踏まえ、来年度さらにインタビューを行いデータを充実させ、分析を進めていきたい。
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