研究概要 |
先端科学技術や先進医療技術等をみる現代社会において,人間をとりまく社会環境が急速に変化している.先端技術ないし科学技術の高度化と文化変動との相関関係については,社会学においてもこれまで「機械と身体」論や「ロボットと身体」問題,フェティシズム論などにおいて多角的に議論されてきた.今日の先端技術と人間社会のあり方を省察するとき,擬人的機械システムや人工知能システムの社会的実現による「ロボットの人間化」やIT技術の高度化がもたらすコミュニケーション形態の変容,医用工学・生殖技術の発達を前提とした人工装置の人間への「埋め込み」や「肉体化」,「人間のロボット化」という逆モーメントの社会現象が顕在化している事態を見過ごすことはできない.本研究では,ポストモダンという場合の「ポスト」の意味を探求するために先端技術の社会的浸透が及ぼす「人間-機械」関係と「現実-仮想」世界のあり方への影響を身体とアイデンティティの問題を実証的に解明することを主たる目的としている.本年度においては,とくに「ロボットの人間化」と「人間のロボット化」を促進・阻害する構造的要因を「技術文化(テクノカルチャー)」の社会文化的文脈において検出し,ロボット工学や医療工学をはじめとする先端技術の応用と社会的普及が,将来の人間とロボット(アンドロイド,ヒト型ロボット)との共生可能な社会的条件を構成していること,ならびにその共生環境が社会的ファシリティと社会福祉サービスを高度化するのに寄与している事例について考察された.本年度の研究成果は,研究論文および学術講演会においてすでに一部報告された.
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