本研究は、若者の移動と生活の不安定化・貧困化について、質的調査を用いて社会学的に明らかにすることを目的としている。本年度は大きく分けて、研究成果の口頭での報告と聞き取り調査を中心に行った。 第一に、研究成果の口頭発表としては、7月にヨーテボリでおこなわれた国際社会学会(ISA)にて、地方から大都市へ移動する若者の適応と困難について報告を行った。9月には、日本都市社会学会大会にて、都市の流動層と貧困化について発表した。2月には、研究成果を地域に還元すべく、「地方から移動する若者たち」をテーマに、「第9回雇用政策研究センターフォーラム」を開催した。私は、青森県の若者の事例について報告を行った。大都市に住む青森県出身の若者にとって、青森の「地元」が多様な位置づけと意味を帯びていることを明らかにした。 第二に、補足的な調査として、青森県在住のUターンしてきた若者と、関東圏在住の不安定雇用・居住状態で働く若者への聞き取りを行った。まだ少数の事例ではあるが、調査対象となった若者は、いずれも非正規雇用の仕事を継続しており、また、家族がいない、折り合いが悪いなどの状況にあった。ただ、青森にUターンしてきた若者は、関東圏でも青森県出身者のネットワークが資源となっており、Uターンするきっかけもそこにあるなど、地元の資源との関係が見えてきた。 今年度の研究においては、若者が大都市へと移動する前後において、地元という資源が具体的にどのような役割を果たすのか、ということへの考えを深めることができた。
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