標記の研究課題に対して、一年目の今年度はまず、対象地域を千葉県九十九里海岸に限定し、この地域の国有地海岸における海の家等の「不法占用」問題の経過を整理し、所有の理論的枠組みに即して捉え直した。この問題の背景には、海岸管理のルーズさがあり、その反動によって規制が強化され、本来ならば可能であるはずの協同組合的な占用までもが阻害されるに至った現状を把握することができた。 つづいて、「海の家」の設置形態の変化に即した利用者の意識について実態調査を行う予定だったが、天候不順のため、住民意識調査に変更した。九十九里海岸を域内にもつ6市町村から無作為に480名を抽出し、郵送法によってアンケート調査を実施した。回収率は40.6%であった。 この調査から判明したことは、住民の約半数が散歩や地域の行事など、日々の生活の延長上で海岸を利用し、その変化について意織している、ということことである。とりわけゴミの散乱(50.3%)、トイレやシャワーなどの公共施設の少なさ(30.3%)、緑化の推進(25.6%)などを指摘する声が顕著であり、行政の対応が必要だということが明らかになった。また、九十九里海岸の中央部では松枯れや松食い虫対策を求める声が強く、南部では海岸浸食対策への要望が強いことも明らかになった。これらについては行政機関が対策を講じているところだが、必ずしも有効に機能していない現状が明らかになった。 以上の結果から、海岸の自由利用が高まれば、環境の変化に対しても意識的になり、質の向上への要求も高まっていくと推定できる。次年度は、この枠組みに基づいて、観光的な利用者の意識や行政機関の対応を調査していく。
|