研究課題/領域番号 |
21530515
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
澁谷 望 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (30277800)
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キーワード | コモンズ / 予示的政治 / 社会運動 |
研究概要 |
本研究は、「グローバル・ジャスティス運動」と呼ばれる、主義への新しい抵抗運動の実態と特徴をとくに文化実践の側面(「予示的政治」の側面)から明らかにすることを目的とする。予示的政治とは運動を社会変革という目的のための手段と見なすのではなく、それ自体来るべき社会を予示的に現出させているという思想であり、そこから従来の運動にないさまざまな特徴が生まれるものと思われる。 本年度(3年目)は、計画としては、反(脱)原発運動を中心とした、震災を契機とした「新しい」イシューに社会運動がどのように関わりを持ちうるかという観点から、(1)理論的整理、(2)フィールド調査、(3)運動言説の整理、を計画していた。 (1)に関しては、マリア・ミース、クラウディア・ヴェールホフら、ドイツ系エコフェミニストの「開発」への批判的分析、とりわけ彼女らがチェルノブイリ事故にともなう放射能汚染への批判的分析を参照しながら、日本の状況分析を試み、また、こうした状況における「コモンズの取り戻し」としてのグローバル・ジャスティス運動の可能性をホロウェイやアンジェリスの議論をもとに検討した。 (2)に関しては、昨年度は、日本においては、反原発運動に積極的に参加しているいくつかのアフィニティグループへのインタビューを行った。また海外では、昨年度に引き続き、オーストラリアおよび韓国の反グローバル化運動のアフィニティ・グループへのインタビューを行った。また、災害時におけるコモンズの取り戻しの実践と理論について、『災害ユートピア』の著者で活動家でもあるレベッカ・ソルニット氏にインタビューを行った。 (3)については今年度はおもに、9月から11月にかけて全世界で広がったオキュパイ運動の、予示的政治に関わる言説を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年は日本では震災・原発事故、世界的には金融危機とウォール街占拠運動の拡大など、予想外の出来事が生じ、調査計画の変更を迫られたが、本研究の主題である、グローバル・ジャスティス運動の、予示的政治あるいは、コモンズの取り戻しの側面はむしろますます強まっており、研究はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は震災・原発事故を契機とする運動の予想外の量的拡大を見た。これは新自由主義への抵抗という意味では、計画当初に予想していたグローバル・ジャスティス運動からのズレをはらんでいる。しかし他方、海外ではウォール街占拠運動など新自由主義への抵抗は予想外に拡大している。一見、海外と日本の運動はすれ違っているようにもみえるが、本研究が焦点化する運動における予示的政治はどちらにおいても強まっており、今後、この点をいっそう理論的に整理することで、この予想外の出来事に対応する。
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