本研究の目的は、日本における外国人住民の受容/排除の様相を、地域間の相違に着目して比較検討し、地域における多文化共生社会のより現実的な可能性と課題を明らかにすることである。ここで言う「地域間の相違」とは、(ア)日本の植民地支配をその背景とする在日コリアン等が多く居住する地域、(イ)日系ブラジル人を中心とする「ニューカマー」たちが多く居住する「外国人集住地域」、(ウ)男性の結婚難をその背景とする「外国人花嫁」が多く住む農山村、そして(エ)これまで外国人住民とは殆ど無縁であった「外国人非集住地域」である。 「外国人非集住地域」では、外国人たちは地域でその存在をまだ十分に認識されておらず、自らのネットワークをも十分構築できていない場合が多い。一方、日本人側も外国人側も、どのようにして共に生きることができるのか試行錯誤した経験があまりないために、一部の住民たちや行政が地域社会の多文化化への対応において、外国人集住地域とは異なる固有の課題が存在すると思われる。本研究ではその事例として鳥取県倉吉市を中心とする鳥取県中部地域をとり上げる。 今年度の研究概要は次のとおりである。 (1)当該地域における在住外国人のつながり・ネットワーク形態の整理・分析: 前年度までの調査で、当該地域における在住外国人のネットワークの形をある程度明らかにしてきた。本年度はそのデータを整理・分析した。 (2)当該地域における在住外国人自身の生活世界の分析: (1)で分析している在住外国人がおかれているネットワークの状態の上部構造として、当事者たちの主観的意識を明らかにするために座談会形式の聞き取り調査を実施した。 (3)当該地域における多文化の地域社会づくり実践の研究: 直接在住外国人に関わっている諸主体の意識や社会の多文化化に対応するための様々な実践を調査した。調査対象は行政と外国人住民を支援する市民団体であった。
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