【具体的内容】 当該研究の最終年度として、これまで積み上げてきた複数の視点からの考察(遠距離介護をおこなう子ども、子どもと離れて暮らす高齢者、仕事と介護の両立支援をおこなう企業、高齢者の住む地域)を総合的に分析しつつ、これから、仕事と介護の両立支援に理解を示し、実際に支援をおこなう企業や地域を増やすためにはどうすればいいのかについての結論を導いた。 【意義】 仕事と介護の両立という視点でのワーク・ライフ・バランス研究をおこなうという当該研究の実施年度中に、それまでもっぱら少子化対策として、仕事と育児との両立が中心的に語られていたワーク・ライフ・バランス論に明らかな変化がみられ、ワーク・ライフ・バランス政策を進める意義として、仕事と育児だけでなく、仕事と介護との両立が強調されるようになってきた。本研究がおこなった労働者に対する調査によっても、労働者自身が老親介護についての漠然とした不安を抱えており、介護と仕事の両立に対して明るい展望は持っていないという事実が明らかになったものの、まだ、労働者が持つ潜在的な介護と仕事の両立のニーズと企業側の支援策の間の乖離は大きい。こうしたなかで、遠距離介護を続けている労働者やそれを支援する企業の取り組みなどについて個々のケースを拾い上げ課題を抽出できたことは、非常に有意義である。 【重要性】 社会政策としての高齢者介護を考えるとき、特に日本においては家族の役割を除外して考えることはできない。そのために、遠距離介護と老親を抱える子どものワーク・ライフ・バランスという視点からの研究は、労働政策や家族政策、地域福祉政策を考えるうえでも、非常に重要である。今後は、企業や社会による遠距離介護支援の促進という側面と同時に、高齢者を抱える地域社会にとって、別居子をどのような形で地域福祉に活かすことができるのか、という視点での研究につなげていきたい。
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