本研究は経済連携協定による外国人介護職の参入により介護労働の概念、意識、介護行為にどのような変化があり、外国人介護職がどのように介護現場に構造化されていくのかを明らかにすることを目的とする。昨年に引き続き、2010年度は下記のことを行った。 1)量的調査 2009年度までのインドネシア人、フィリピン人に対する調査で候補者の属性にはかなりの違いがあることが明らかになってきている。2009年度にインドネシア人候補者を受け入れた病院・施設を対象とした調査に引き続いてフィリピン人候補者を受け入れた病院・施設に対して質問票を配布した。フィリピン人候補者を受け入れてみての感想としては、「敬老精神がある」(そう思う/どちらかといえばそう思う:98%)「協調性がある」(同94%)「性格が明るい」(同90%)の順で評価が高い一方、「介護記録作成に必要な日本語の読み書きができる」(同8%)など、日本語能力に問題があることが示唆された。 2)質的調査 2009年度に引き続いて九州、関西、東京の病院及び施設でのインタビュー調査と参与観察を継続した。多くの病院・施設において外国人介護職は「優秀」「明るい」「やさしい」として利用者の評判も良く、施設側からも高く評価される一方で、出身国で看護師として働いた経験がある候補者にとってはキャリアパスという点からは不満が見られた。今年度は、韓国の介護施設で調査を行い、介護の概念や実践は社会的・文化的に規定されているのみならず、介護保険や施設運営などのマネージメントの観点からも捉えることが必要であることが理解された。さらに異文化間介護については、在日フィリピン人が働くいくつかの介護施設において、フィリピンにおける家族介護の概念が日本の施設の在り方によってどのように翻訳され、実践されているかについてのフィールドワークを行った。これらの研究成果は順次学会等で報告をしている。
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