研究課題
日本と東南アジア諸国との経済連携協定(EPA)により、2008年より外国人介護福祉士候補者の受け入れが開始された。2011年までに670名余のインドネシア人とフィリピン人候補者が日本語研修を受けた後に、全国の介護施設で就労を開始している。これまでにも在日フィリピン人や在日コリアンによる介護職への参入は限定的な形で行われてきたが、政府間協定により日本の医療・福祉現場に外国人労働者が参入するのは初めてのことである。本研究は、外国人介護職の参入による異文化間介護労働の概念や実践及び将来の定住化傾向を明らかにすることを目的としている。そのための作業仮説として以下の2点をあげる。第1に「異文化問介護仮説」として、日本の介護現場における外国人介護職の参入は差別や対立を生みだすものなのか、あるいは介護の概念を多元化するような素地を提供するものなのかどうか。第2に「定住化仮説」として外国人介護職が日本の超高齢化社会を担う人材としてどのように日本の労働市場に構造化されていくのかについて検討した。その結果、異文化間介護については第1陣のインドネシア人を受け入れた介護施設を対象とする2010年に行った調査(n=19、回収率35%)において、89.5%の施設が「職場が活性化した」、78.9%が「日本人スタッフが異なる文化を理解するきっかけとなった」、52.7%が「入所者が以前よりもいきいきとしてきた」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した。定住化については、国家試験合格という要因が働いているおり、2012年1月に初めての介護福祉士の国家試験が行われ、36名が合格したのは周知のとおりである。2012年に候補者を受け入れている施設に対して行った調査(n=86、回収率32%)では、回答した施設の90%は候補者に対して何らかの期待を持っており、そのうち48.6%は「一般職員として長く定着して欲しい」、21.6%は「後輩の外国人候補者の教育係になって欲しい」、16.2%は「能力のあるものは幹部職員になって欲しい」、10.8%は「当施設と出身国を結ぶパートナーとなって欲しい」と回答し、将来の日本の介護を担う人材として外国人介護職が位置づけられていることが明らかになった。
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Southeast Asian Studies
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Asien The Journal on Contemporary Asia
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