今年度の第一の研究成果は、直近に稼働を開始した国内・自動車工場を訪問し、先端的な自動車生産シヌテムについて調査したことである。ピッキング・システムを組み立て工場に全面導入して「太く短い」フイッシュボーンボーン・ライン化を徹底し、これにより、多車種混流生産の混流度を高め、また、生産リード・タイムの短縮を一段高いレベルへと引き上げるとともに、組み立て作業の習熟を容易にし、作業効率を高めている。こうした生産革新が、開発・設計段階から生産段階までの一貫した統合システムの形成、仕事管理・業績管理の再編成と結びつきながら展開されていることを、調査を通じて理解を深めることができた。 第二に、連携研究者がスウェーデンにおける近年の「トヨタ生産方式」導入の動きを調査するとともに、日本の自動車生産システムとスウェーデン、ボルボの生産システムとの比較研究のこれまでの成果について検討を深め、成果のとりまとめ作業を進めた。「標準化」、生産の柔軟性とバッファー活用、生産労働者―監督者―生産技術者―開発技術者との分業関係などについて、雇用システム、労使関係や福祉レジームの違いが与える影響について分析を進めた。 第三に、非正規労働に関する日韓比較のシンポジウムに参加し、日韓比較の視点から雇用システムと生活保障システム変容との関連について検討を進めた。日本の生産革新は、非正規労働と正規労働との分業関係を明確化するなかで展開しており、日韓の非正規労働を幅広い視点から考える機会を持ったことは、日本の生産革新と雇用システムの特質を検討するうえで有益であった。
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