アメリカにおける政治報道は過去20年ほどの間に、これまでの規範である客観性追及から、政治的な立場を明確にした情報提供に大きく変化しつつある。このメディアの立場の変化に触発され、報道の政治的立場や偏向を指摘し、国民を啓発する「メディア監視団体(メディア・ウォッチドッグ団体)」がここ数年、次々と誕生しつつある。本研究では、「メディア監視団体」の動向と、その政治的、社会的影響力について包括的に分析を続けている。本研究では、特に「メディア監視団体」が、報道機関の現状に危機感を持つ市民の声を反映する公的利益団体となっている点に着目し、政治過程の中で新しい形の市民運動としての「メディア監視団体」が担っている政治参加の役割、およびその可能性も含めて研究を続けた。研究では「メディア監視団体」の現状や活動を中心としているものの、アメリカにおけるメディアと政治の関係、特に放送メディアの政治的な立場、中立性(客観性)、および政治過程における利益団体、市民運動などについても分析に加えている。本年度は昨年に引き続き、研究で明らかになった部分については、書籍、論文で発表したほか、日米での学会で報告した。
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