研究概要 |
1研究成果の具体的内容 本研究は,現代社会における社会的格差を,若年層への社会調査を実施することで実証的に解明することを目的とする.前年度に調査を実施したので,本年度はデータ分析と成果発表をおこなった.とくに,転職,健康,食生活,恋愛といったライフスタイルの多様性に焦点をあてて,社会階層がどのように社会的格差を生み出すのかを検討した.その結果,友人,同僚,家族などのソーシャル・キャピタルが重要な役割を果たすことを明らかにした. 2意義 これまで教育,職業,収入といった社会経済的地位については,地位達成モデルなどによって社会的格差の産出メカニズムが明らかにされてきた.しかし,ライフスタイルのようにそこから漏れることがらについては未解明であった.とりわけ,食生活,恋愛における社会的格差について,これまで事例研究は存在したが,統計的な研究は本研究がはじめてである. 3重要性 現代の日本は経済的に豊かになったので,今後ますますライフスタイルが多様化すると予想できる.そのため,もし趣味や価値観が機会の不平等に起因して偏ることがあれば,多くの人びとにとって望ましい状況といえないであろう.本研究は,一見自由にみえる個人のライフスタイルが,社会構造の影響を強く受けていることを実証的に示した.他方,本研究では郵送調査を実施し,回収率64%を実現した.一般に郵送調査の回収率は低いとされている.このように比較的高くなったのは,本研究で様々なノウハウを蓄積し実行したためといえるだろう.
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