研究概要 |
本年度は、次の4点について調査・研究を進めた。1.中間層概念の形成・変容をめぐる国際比較、2.地域社会における実証的研究:都心部、3.地域社会における実証的研究:地方、4.過去の社会調査の再評価と中間層概念の再検討である。 1については、イギリスにおけるB.S.ロウントリーの社会調査と社会実践の関連について解明を試み、論文1本を公刊し、学会報告1件を行った(論文、学会発表ともにタイトルは「ロウントリーの都市貧困調査:食品化学実験からの出発-近代イギリスにおける「効率性」の探求」。『ソシオロジスト』第14号。第84回日本社会学会大会)。これらの研究成果で明らかにしたことは、B.S.ロウントリーの貧困調査の構想のベースには、食品化学の実験に10年間携わり、実証的な数値を扱った経験があること、それが労働者階級の生活文化を視野に入れて、「人間的要因」を重視した「効率性」についての独特の思索へと発展していったこと等である。 2については、学会報告1件を行った(「近代東京における軍用地と都市空間-渋谷・代々木周辺の都市基盤の形成」第29回日本都市社会学会大会)。近代東京における軍用地、都市空間、都市中間層の形成過程が密接に関連していることについて、都心部の渋谷・代々木周辺の変化から明らかにした。 3については、論文1本を公刊した(「拡大する瀬戸内漁民の世界」、『歴博』第168号)。 4については、論文2本を公刊し(「特集論文:質的調査データのアーカイブと二次分析(1):イギリスの事例」『社会と調査』第8号)('Ray Pahl's Sociological Career:Fifty Years of Impact',Sociological Research Online,16(3)-11)、イギリスにおける社会調査と階層分析にみられる特徴を歴史社会学的視点から分析し、労働者階級に対するまなざしの変容過程を明らかにした。
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