平成21年と平成22年にインタビュー調査した、日本と韓国の非正規労働者の組織化事例のうち、地域の非正規労働者を組織化している諸事例を分析し、日本と韓国においてもコミュニティ・ユニオニズムを実践する労組があることを明らかにした。日本ではコミュニティ・ユニオンと呼ばれる労組が、そして韓国では地域一般労組が、従来の企業・職場を基盤とする組織化方式から脱皮し、地域のあらゆる労働者を組織化する方式により非正規労働者を組織化し、労働条件だけではなくコミュニティ生活全般に関心を持ち、コミュニティ生活にかかわる制度改善に取り組み、さらに労働問題の解決やコミュニティの生活改善のために地域のコミュニティ組織と連合して闘う、ということが明らかにされた。しかし、日本と韓国におけるコミュニティ・ユニオニズムを比較すると、日本のコミュニティ・ユニオニズムより韓国のコミュニティ・ユニオニズムのほうがコミュニティ生活全般への関心が相対的に高く、コミュニティ組織との連合もより活発である。さらに、北アメリカやイギリスのコミュニティ・ユニオニズムとは違って、日本と韓国のコミュニティ・ユニオニズムは「労組型コミュニティ・ユニオニズム」である。グローバル化や新自由主義経済の下で進んだ労働運動の停滞を克服し、組織化しにくい労働者を組織化し、代弁するのに適した組織モデルあるいはユニオニズムであるとされるコミュニティ・ユニオニズムを日本と韓国でも確認できたこと、また両国のコミュニティ・ユニオニズムが他の先進経済のコミュニティ・ユニオニズムとは違うこと、さらに両国のコミュニティ・ユニオニズムに共通点と相違点があること、などを明らかにしたのは、コミュニティ・ユニオニズムの多様性に関する議論に一助するといえる。こうした点から、本研究の成果は大変重要で意義のある成果である。
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