平成21年度は、語りつぐ実践について、次の三つの団体/個人へのライフストーリー・インタビュー調査を行った。それらは、(1)戦争体験の当事者であって平和ガイドとして戦争体験を若い世代に語り継いでいる人びと、(2)南風原文化センターを中心に旧陸軍病院壕をはじめとして町内の戦争遺跡をガイドしている町民および町外の市民、(3)平和ガイドに従事している若者のサークル、(4)ひめゆり平和祈念資料館での見学者の動向、である。以下は、いずれも調査研究の途中経過である。(1)戦争体験の当事者として戦争を語りついでいるYzさんには数回のインタビューをおこない、その語りから、ガイドの実践にかかわることで語る内容がいかに変容してきているかを考察した。その結果、当時の体験は時系列的に編成されて、とくに最近の書籍などの証拠資料を利用することでわかりやすく構成されて伝えられていることがあきらかになった。また(2)南風原町では平成21年に新築された南風原文化センターのある黄金森を中心に戦争遺跡の保存に取り組み、そのガイドを担うNPO組織が作られ、活発に語り継ぐ活動が実践されている。こうしたエネルギがどこから来ているのか、その活動の中心的な担い手についてインタビュー調査を重ね、その背景を探っているところである。(3)若者が若者に語り継ぐ実践は特有な伝え方の工夫があることが、ガイド実践の参与観察からわかった。(4)見学者が何に関心を示すのかを調査する方法を、見学経路や見学者の感想文から考察するための方法論を検討している。次年度では調査を継続しつつ、一定の成果をまとめる予定である。
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