本研究では、日本と韓国における周辺国(民)に対する認識(イメージ・表象)がそれぞれどのような相関・影響関係にあるのかを、地政学的空間(世界)認識及びナショナル・アイデンティティの構築との関連で解明することを目的としており、以下の三つのアプローチから研究を展開した。第一に、先行研究のレビューを行い、他者認識の時系列な把握を試みながら、地政学的状況への認識と「複数の周辺国」に対する認識の相関、影響関係を明らかにすること。第二に、内容分析・言説分析、そして第三に受け手分析である。2年目の本年度においては、初年度からの先行研究の整理及び分析を継続しつつ、事例分析を中心に展開した。また、各種メディア、世論調査機関、政府関連機関による調査結果などを収集分析し、時系列及び相関・影響関係を解明する作業も継続して取り組んだ。研究成果としては、雑誌論文や学会発表の形で発表した。その一つとして、「テレビは歴史を語れるか」というタイトルで、『放送レポート』誌上で連載を開始したが、ここでは「日韓併合100年」を記念して放送される日本側のテレビ番組の内容分析(言説分析)の成果を、放送業界及び一般読者向けに書いている文章である。本研究の学術的な成果としては、報告書の形でまとめる予定である。また、主に英語圏の学会で発表した研究成果は、日本側の米国、西洋、アジア認識の問題群についてであった。これらの学会発表の論文についても、最終年度には学会誌への投稿を行う予定であり、執筆に着手した。その一方で、「高校無償化政策」をめぐる世論の動向についての学会発表では、受け手分析の一環として、インターネット空間の世論の分析にも取り組み、最終年度に行う調査のための準備を進めた。
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