研究課題/領域番号 |
21530564
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
挽地 康彦 和光大学, 現代人間学部, 講師 (30460041)
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研究分担者 |
古屋 哲 大谷大学, 文学部, 講師 (90460659)
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (40302335)
樋口 直人 徳島大学, 総合科学部, 准教授 (00314831)
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キーワード | 多文化共生 / セキュリティ / 排除 / 国民国家 / 外国人 / 福祉国家 |
研究概要 |
本年度は、分析編として移民をめぐる理論的研究と、それと並行して移住者支援のNGOとのアクション・リサーチを行った。6月に移住労働者関連の全国大会でワークショップをもち入管法改定をめぐって支援者と議論するとともに、移住女性への聞き取り調査を実施した。年6回の研究会では、担当分野にかかわる文献のレビューおよび移民研究の再編のための突破口を模索した。これらの成果は以下のように示される。 1.「貧困と再分配」の観点から日本における移住女性の主体性のあり様と社会関係に着目し、まず女性たちを国境を越えた移住労働の主体的な担い手とみなすミクロレベルの移民研究と、グローバル資本主義の搾取構造、とりわけその再生産過程に取り込まれた「犠牲者」とみなすマクロレベルの移民研究を相対化した。そのうえで、貧困状態にある移住女性が支援団体と関わりながら生き抜いていく戦略を、エスニックな共同体とは一線を画す新たな協同性の発露として描いていくパースペクティヴが得られた。 2.移住者の「統治」という観点から、移民研究と主権論の接点を思想的、理論的に吟味した。伝統的な主権論と移民研究の関係が定住者と移住者の非対称性に焦点を合せていたのに対して、コロニアルな系譜を下地にする主権論と移民研究の関係は、移住者のなかの非対称性(合法/不法、優良/劣等、自由/強制)を明らかにする。これらの知見は昨今のグローバルな主権形態の内実を検討するうえで有効である。ただし、国家主権との関係で定義される「外国人」の研究は、対象者を在留資格のカテゴリで認識することから方法論的ナショナリズムの問題をつねに孕んでおり、認識論的なレベルでの移民研究の脱構築が必要である。
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