研究課題
本年度は、昨年度に引き続き、各人のテーマに即した分析的な研究とNGOとのアクション・リサーチという2つの側面から研究を進め、年5回の研究会を実施した。その成果はおおよそ以下のようにまとめられる。1.(1)主権と移民政策の関連では、とりわけ「多文化共生」を標榜する移民政策をめぐる政策主体および研究主体の間に主権的権力の作用を等閑視する傾向が析出された。移民政策を批判的に検討するためにも、また移民研究を促進させるためにも、今世紀に移民研究の新たなテーマとして浮上した「セキュリティと移民」に関する重点的な検討が急がれる。(2)多文化共生批判を視野に入れた移民の生活世界の分析では、移民研究に社会構造的な観点は不可欠だが従来の共生論と社会構造論は両立しえないため、国民国家モデルに依拠しない共生論を「現象学的共生論」として展開する見通しが得られた。2.移住労働者と連帯する全国ネットワークの「在日外国人の貧困と潜在能力」プロジェクトと協同してワークショップを持ち、移住者の雇用・失業問題やシングルマザーの貧困などについて議論した。「移住者と貧困」というアプローチへの理論的な貢献として、貧困状況から「抜け出す」手段としての政策的有効性を見極めるだけでなく、政策的介入には国家の包摂と排除の機制が働いていることや、エスニック・グループによって「抜け出す」経路や手段に差異があることを共有し、ロビーイングに反映させるステップを築いた。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件)
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