研究課題
最終年度にあたる本年度は、理論的・分析的な研究とNGOとのアクション・リサーチの両面から研究プロジェクトを進めると同時に、これまでの研究成果をまとめるべく研究会を数回開催し、日本社会学会にて共同研究報告(民族・エスニシティ(2)「批判的移民理論のために」)を行った。これらの成果は以下のとおりである。日本の社会学領域における移民研究は、一国モデルに対する批判として登場した経緯があるが、その後は現状追随的な研究が増加し批判的な性格を失って久しい。また、先行研究のほとんどは国民国家ないし主権国家が関与した現実を所与のものとしており、研究それ自体がその現実を再生産することに自覚的でなかったといえる。そこで本プロジェクトでは、過去2年間の研究蓄積を踏まえながら、既存の移民研究を批判的に捉えるような新たな移民理論の構築をめざした。とりわけ国民国家ないし主権国家体制を相対化する理論を批判的移民理論として位置づけ、大きく分けて以下の3つのアプローチから理論構築を行った。(1)移民管理をめぐる近代国家の合理性の分析として、国際移民に働きかける国家の諸実践の対象化と権力装置の抽出、また「啓蒙の弁証法」を用いた近代国家と排外主義の関係性の解読。(2)モラルエコノミーと国家の主権作用の観点から移住女性のシティズンシップをめぐる従来の議論の批判的検討と、ケアに基づくよりジェンダー包摂的なシティズンシップ理論の可能性の探求。(3)行為者レベルのミクロな水準からの共生論、社会統合論の模索として、主権国家と共犯関係にある「多文化共生」概念の批判隅的分析と現象学的共生論の考察を通じた「前国家的」な共生論の構築、および排除と統合の両概念を社会構造的側面のみならず行為者の側面から規定しなおす移民理論における新たな社会統合理論の構築。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) 図書 (1件)
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